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米国による対ビルマ制裁の現状

February 25, 2013

 

(2013年2月25日案)

1. 米国は、ビルマ1 の軍政権が1988年に同国民の抗議活動に対して武力で制圧をしたこと等を契機として、1989年同国に対する特恵関税適用を停止したあと、各種の法律や行政命令等を通じて段階的にビルマに対する制裁を強化してきた結果、現時点では、法制度上以下を骨子とする制裁措置をとることが可能となっている。

(a) U.S. person2  によるビルマへの新規投資の禁止、
(b) U.S. person によるビルマへの金融サービス輸出の禁止、及び、
(c) U.S. person によるビルマ原産の産品の米国への輸入禁止。

2. また、米政府は、ビルマの旧軍政権の幹部、軍関係者、ビルマ国内の民主化運動を抑圧した指導者、人権侵害や汚職、麻薬取引等に関与した者等を含む者(個人、法人その他の団体)を特定制裁対象者(Specially Designated Nationals: SDN)として指定し、U.S. person がこれらのSDNとして指定された者(及びSDNに指定された者により実効的に支配されている者)と何らかの取引を行うことを包括的に禁止するとともに、それらの者の資産のうち、米国の権限が及ぶものを資産凍結措置の対象としている。

3. 米国は、ビルマの新政権が2011年に民主化を推進する姿勢を示し始めたことを受け、2012年7月、(a)ビルマへの新規投資の禁止、及び(b) 金融サービスの輸出禁止措置を、そして2012年11月のオバマ大統領によるビルマ訪問の直前には、(c)ビルマ産品の米国への輸入禁止措置を大幅に緩和する方針を表明し、現在では、上記(a)、(b)、及び(c)の制裁措置は、暫定措置として実質的に解除された形となっている。

4. しかし、米国政府は、ビルマの現政権が、継続的に民主化運動を支援し、また、同国内の人権侵害、汚職、北朝鮮等との関係維持等を排除することを狙い、これらの行為に関連してSDNに指定された者との取引禁止や、それらの資産凍結等の経済措置は、依然として継続している。

5. よって、日本等米国外の企業等が、今後対ビルマ投資や事業を展開するにあたり、SDN に指定された者やそれらの者の実効的支配下にある者との取引を行う場合には、そのような取引等が米国の権限が及ぶところでなされる場合には、米国による資産凍結の対象となったり、また、取引関連の金融サービス(送金、決済、為替等)が得られなくなるリスクは依然として存在するので、注意する必要がある。また、米国の現地法人等がSDNに指定された者やそれらの実効的支配下にある者との取引に一切関わらないようコンプライアンス体制を整える必要がある。


1 米国政府は、同国を公式には、軍政権が支配する前の国名であった「ビルマ」(Burma)と呼んでいる。
2 U.S. person とは、米国籍を有する個人、米国の永住権を有する個人、物理的に米国内に居る個人、米国の法令によって設立された法人、団体等及びその米国外の支店、営業所等を含むとされている。

This article was originally published by Bingham McCutchen LLP.